福岡地方裁判所小倉支部 昭和31年(わ)871号 判決 1960年7月20日
被告人 門田昭次
昭二・一二・二生 鳶職
主文
被告人を懲役一年六月に処する。
未決勾留日数中二四〇日を右本刑に算入する。
領置にかかる日本刀一振(昭和三二年(裁)第五三号の三)はこれを没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は
第一、昭和三一年八月三一日午前一〇時頃、かねて自己の懇意にしている小玉理平を、その止宿していた福岡県京都郡苅田町提の松の井旅館に訪ねた際、同人がその前日夜本件分離前の共同被告人長井資紀、同石田嶋三、同柿本勝らから暴行を受けたことを知り痛く憤慨し、たまたま同旅館前を通りかかつた右柿本の姿を認めるや、同人を呼びつけて詰問し、右長井に話がある旨を伝えるように申し向けたところ、同日午後七時頃被告人の肩書住所近くに右長井等がタクシーに乗車して来たり、長井が被告人に対し「今夜九時に南原の海岸に来い話はつけてやる」と申し向け暗に相互に決斗をなすべき旨を告げたので、被告人も同人等に対しこれに応ずる旨を答え、同夜午後一〇時頃向笠勲等と相謀つて、自らは日本刀(昭和三二年(裁)第五三号の三)を携え、相手方の長井等を探し求めるうち、同町大字浜町国鉄日豊線ガード下附近路上において日本刀(同号の一)、匕首等を手にした長井等と遭遇するや、被告人等は同所において長井等とそれぞれ所携の右日本刀等を用いて相互に斬り合いをなし、もつて決斗をなし、
第二、同月三一日午後一〇時頃、前町浜町国鉄日豊線ガド下附近路上において、法定の除外事由がないのに拘らず、日本刀一振(同号の三)を所持していた
ものである。
(証拠の標目)(略)
(再犯加重の事由となる前科)
被告人は昭和二十七年一一月七日行橋簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年六月の刑を云渡され(昭和二八年七月八日確定)その頃右刑の執行を受け終つたもので、このことは検察事務官作成の被告人に対する昭和三四年一一月二四日附前科調書の記載と被告人の当公廷における供述とによつて明らかである。
(法令の適用)
被告人の判示第一の所為は、決斗罪ニ関スル件第二条、刑法施行法第一九条第二項、刑法第六〇条に、判示第二の所為は、銃砲刀剣類等所持取締法附則第九項、銃砲刀剣類等所持取締令第二条、第二六条第一号、罰金等臨時措置法第二条第一項に、それぞれ該当するので後者については、所定刑中懲役刑を選択し、被告人には前示前科があるので、前者の罪の刑につき刑法第五六条第一項、刑法施行法第二一条、旧刑法第九二条、第七〇条第一項を、後者の罪の刑につき刑法第五六条第一項、第五七条をそれぞれ適用して再犯加重を施し、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条、刑法施行法第二条に従い重い前者の決斗の罪の重禁錮の刑の長期に、旧刑法第七〇条第二項の制限の範囲内で併合罪の加重を施し、諸般の情状を考慮し、刑法第六六条、刑法施行法第二一条、旧刑法第九〇条、第七〇条第一項により右刑に二等を減じたうえ刑法施行法第一九条第一項、第二〇条、第二条に従い右重禁錮の刑を刑法の懲役刑に変更して、右刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、刑法第二一条により未決勾留日数中二四〇日を右本刑に算入し、領置にかかる主文第三項掲記の物件は、被告人の判示第二の犯行の組成物件にして、かつ被告人以外の者の所有に属しないことが明らかであるから、同法第一九条第一項第一号、第二項本文を適用してこれを没取し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項但書を適用し、これを被告人に負担させないこととする。
以上の理由により主文のとおり判決する。
(裁判官 天野清治 柳川俊一 村瀬鎮雄)